我々の研究グループは放射線計測と検出器技術を活用し、宇宙における高エネルギー現象の解明を目指しています。また計測技術をさまざまな分野に応用し、原子核物理・核医学診断装置・環境放射線計測といった物理に近い分野だけでなく、高感度質量分析装置を用いた歴史的資料の分析といった他分野と連携した実績もあげています。
我々の目は可視光という極めて限られた波長の電磁波だけを見ることができます。すなわち、夜空を見上げたり望遠鏡をのぞいたりして観測できる天体の姿は、宇宙のほんの一面を見ているにすぎません。20世紀後半から終盤にかけて、放射線の一種であるX線やガンマ線で宇宙を観測する技術が実現し、放射線による天文学が始まりました。すると宇宙のあらゆるところで、激しく活動する天体の姿が明らかとなると同時に、新しい謎もまた次々と生まれてきました。我々のグループも国内外の研究者と協力しながら、最先端の観測装置を開発して宇宙の謎に挑んでいます。
放射線を検出する際には、放射線の持つエネルギーを電子に変換し、放射線計測に特化したエレクトロニクスによって電気信号として検知するという手法をとります。放射線を電子に転換する方法は複数のアプローチがあり、用途に応じて使い分けられます。シンチレータという放射線と反応して蛍光を出す結晶と光センサを組み合わせることで検知する方法や、半導体センサと放射線が直接反応した際に発生する電子を信号として読み出す方法などがあります。科学的な目的を実現するために最適な検出器を設計する必要があり、検出器の性質・性能について熟知していることが求められます。またセンサから出力される電気信号を処理する回路の知識や、データ収集と解析に関わる知識も必要となります。
研究を通じて学部の間に培った物理学の理解をさらに深めながら、最先端の研究現場で実験的研究に関連するスキルを身につけてもらいます。具体的には、宇宙物理・原子核物理・放射線物理の知識、電子回路理論と回路設計技術、プログラムとデータ処理技術やCADなどの特定アプリケーションなどが挙げられます。自分の将来の進路と興味に応じてテーマを選ぶこともできるでしょう。
実験に限らずなんでもそうですが、「習うより慣れよ」。我々の研究室には様々なことに挑戦できる環境があります。手と頭をフル稼働して、研究の世界に飛び込んで来てください。放射線を利用して、我々と一緒に未知の世界を探検しましょう。
郡司・門叶・中森